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第964話

「本当…ですか?」 「こんな事で嘘吐きませんよ。」 目が大きく見開き、ぽかんとする三条。 反対に長岡は満足そうな顔をしている。 「成績も素行も内申も申し分ありませんからね。 あ、でも、きちんと会議で話し合った結果ですよ。 贔屓目は一切ありません。」 成績は常に上位。 出席日数も授業態度も申し分なし。 1クラスから希望者1人を選出し会議の末、決定した。 若干名の募集の為2名選出されたが、2人とも真面目で学校の名前を背負ってもらっても恥ずかしくない、と太鼓判を押された時は自分の事以上に嬉しかった。 「これ、要項纏めたから親御さんにも見せてな。 それから、こっちも。」 ファイルから書類を取り出すと簡単な説明をする。 ぽかんとしていた三条も頷きながら聴いているが、心配なので附箋にメモを書き貼り付けておいた方が良さそうだ。 下を向くとさらさらした髪が目の前の生徒の顔を隠した。 「本当に良いんだな。」 目の前の三条は真っ直ぐに自分を見詰める。 その瞬間ドキッとした。 その目がとても意思が強く、とても綺麗だったから。 穏やかな生徒だと思う。 入学当時も今も印象は変わらない。 それは他教科の先生方もそう思っているだろう。 所謂、優等生。 教師の手を煩わせない良い子。 実際そうだ。 だが、本当のこの生徒はそれだけではない。 真っ直ぐな折れない芯を持っている。 自由に形を作り一見やわらかいのかと触れれば、それがやわらかいだけではないと知った。 努力をし、それを力に変える。 この生徒は、自慢の生徒だ。 はい、と意志の強い声に長岡は頷き返す。 「内容は面接と小論文だな。 俺も出来る限りの事はするから、頑張ろうな。」 「はい、よろしくお願いします。」 律儀に頭を下げると髪がさらさらと溢れる。 頭を撫でたいが、それをグッと堪えた。 土曜日しこたま甘やかそう。

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