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第965話

小論対策は授業でも触れたし、補講の時にもしている。 基本は出来ているから応用を中心に。 三条の事だから、さほど心配はしていない。 俺も対策用に参考書読み返そう それから、過去問集めて… 目の前で真剣にプリントを読んでる生徒は此方の視線に気付く事もない。 何時も隣にいるせいか、自分よりプリントの方に興味があるのか。 とんっと指定のスニーカーに自分のそれをぶつけた。 『放課後 長く一緒に居れるな』 付箋に書き込まれた文字を見て、真剣な目がキラキラと輝き尻尾がぶんぶんと揺れる。 何度も頷くその顔の可愛い事と言ったらない。 『嬉しい』 笑みを深くする三条に長岡もつられてしまう。 他の生徒は見る事の出来ない本当の笑顔。 愛しい人を見詰めるやわらかな視線。 言葉。 クラスの誰も知らない顔を目の前の生徒には惜し気もなく見せる。 『でも、対策は真面目にするからな』 向かいの体育館から部活に精をだす声が聞こえる中、2人は静かに会話を進めていった。

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