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第967話
三条なら小論文も面接も心配はないが、学校推薦のプレッシャーをどれ程ストレスに感じているかが心配だ。
豊かな感受性は人の言葉の裏まで読み取る。
適度に息抜きをさせないとと思うが、三条は何が好きなのだろう。
勿論、好物や好きな本なんかは知っている。
だが、そうではなくストレス解消になるような事。
バッティングセンターの様な運動施設でスポーツや、映画や買い物で気分を入れ替える。
部屋でばかり過ごしていては解消にはならないだろうか。
つい眉をしかめてしまう。
「先生?」
「ん?
どうした?」
「ぼーっとしてましたけど、体調悪いですか…?」
「あぁ、違いますよ。
考え事してて。」
口角を上げてみても三条は納得いかないと顔を覗かれた。
ふわふわと遥登の清潔なにおいが鼻腔を掠める。
愛しい恋人のにおいだ。
「本当ですか?」
真っ直ぐに自分を見詰めるその目に嘘は吐けない。
「本当ですよ。
恋人の事を考えてました。」
「恋、人…」
事実、嘘ではない。
本当に恋人の事を考えていた。
くりくりとした目がより大きく開かれるとかぁっと頬に赤みが増す。
「あぁ、みんなには秘密でお願いします。
秘密厳守で。」
悪戯気に口の前に人差し指を立ててみせると、こっくりと頷いた。
思わず口許が緩みそうになる。
何時までも初で男心を擽る反応だ。
「可愛いんですよ、俺の恋人。」
「そう、なんですか。」
「写真、見ますか?
ちょっと過激かもだけど。」
「っ!?」
きょどりはじめた生徒に教師は表情を変える。
参った
これでは自分の方がストレス発散になっている
可愛らしい恋人とのやり取りに心が穏やかになってきた。
これではどっちがストレス発散になっているのかわからない。
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