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第968話

日に日に濃くなる冬の気配。 田圃は丸刈りになり、あちこちの公園で冬囲いがされはじめ、町から色が消えていく。 町を彩るのは紅葉した落葉樹は最後とばかりに華やかに着飾る。 「遥登あったけぇな。 最高。」 「良かったです。」 でも、こうして体温の高い恋人とイチャ付けるのは最高だ。 頭に鼻先を埋め、腹に回した腕に力を込めて引き寄せると胸から腹にかけてもあたたかくなった。 愛しいぬくもりは格別。 「そんな寒いですか? なにかあたたかいものでも持ってきます…、けど、」 離れるなと回した腕に力を込めると三条はそのまま大人しく腕の中にいる。 遥登の存在で自分はこんなにも満たされる。 しあわせになれる。 「すげぇ好き。」 細い身体を抱き締める長岡の腕にあたたかな手が触れた。 手のひらもあたたかい。 「…俺も、すごい好きです。」 「すごいって、どれ位?」 「どれ位って…子供ですか。 うーん、そうですね…。 正宗さんの事養いたい位ですかね。」 「ははっ、養ってくれんだ。 プロポーズかよ。」 頭に埋めていた顔を上げ肩に顎をのせると破顔する。 そんな深い意味ではなくて…と慌てだす恋人が可愛くて愛おしくてたまらない。

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