983 / 1273
第983話
「大丈夫なのかよ。」
「え?
なにがですか?」
本から顔を上げた三条はきょとんと私服の長岡を見る。
集中していて話が耳に入ってこなかったらしい。
「文化祭まで任されて、大丈夫かって。」
「うーん、でも、楽しいですし。」
「無理だけはすんな。
今、体調崩れたら泣いても泣ききれねぇぞ。」
困った様に眉を下げて笑う三条に長岡は息を吐くと、心配してんだと付け加えた。
「気を付けます。
だけど、田上達も一緒ですし…最後、ですから、」
小さく溢れた“最後”の言葉。
文化祭が終われば2週間後には推薦がある。
もう、楽しい時間は短い。
それを理解している、経験してきた長岡はそれ以上の言葉を言う事は出来ない。
「なんかあったらすぐに頼れ。
教師の方でも、な。」
「はい。
ありがとうございます。」
穏やかに笑う長岡はぽん、と三条の頭を撫でた。
ともだちにシェアしよう!