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第986話
「こんな感じでどう?」
「おー、はしまきだ。」
「食べても良い?
ソースないの?
せめてマヨネーズ。」
楽しそうな声から少し離れた所で担任は副任の家庭科教諭と話している。
有り難い事に試作をするなら調理室を使って良いと快く貸してくれた。
「調理室お借りして、すみません。
きちんと綺麗に後片づけしますので。」
「良いですよ。
A組ははしまきなんですね。
美味しそう。
買いに行きます。」
三条は小論指導を時間をずらし参加している。
友人達には心配されたが、気分転換にもなるし小腹も満たされて良い休憩になっているらしい。
長岡と一緒に居られれば嬉しいと言うのが本音だが。
「長岡、出来たー!」
「本人目の前にしてるんだから先生付けてな。」
「うぃーす。
長岡先生、出来た!」
あちち…と頬張る吉田に呼ばれ、担任と副任も輪に加わった。
長岡は三条の隣に立つとその手元を眺める。
生地を焼き端からくるくると割り箸に巻き付け最後に巻き終わりを焼き固めれば持ち上げても崩れにくい。
当日は使い捨ての容器が必要だとしても十分片手で食べられる。
気軽に、という点では名案だ。
三条が器用に巻き付けたそれを奪うと一口かじった。
「あ…」
「うん。
美味いな。」
「チーズ入れても美味しそう。
少し値段上がるけど、目玉焼きとか。」
「あ!
美味しそう!」
「いっそ、フランクフルトに巻くのも美味しいよ。
ノーマルとトッピングありと選んでもらっても、これならすぐに調理出来るし良いと思う。」
家庭科教諭の提案に委員長はメモを取り、他の生徒も美味しそうとそちらの話に釘付けだ。
もぐもぐと頬を膨らませる長岡から目を離せない三条を除いては。
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