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第1002話
「はぁぁ、あったかい。」
カーディガンの着用は控えろと言ったが今日は冷える。
ジャケットはハンガーにかけ、代わりに私服のフルジップパーカーを羽織った三条はちびちびとあたたかいコーヒーで身体をあたためていた。
「寒かったろ。
なんか菓子…」
「正宗さん」
確か吊り戸棚に置いた筈だと手を伸ばした手が止まる。
ゴトっと音がすると背中があたたかくなったから。
「どうした?」
「腕時計、本当にありがとうございました。
すごく役にたちました。
それと、制服のポケットにこれが入ってたんですけど、ご存知ありませんか?」
珍しく三条自ら抱き付いてきてくれた事が嬉しくて頬が緩む。
顔は見えないがどんな顔をしているか想像するに容易い。
前に伸びてきた手に握られているのは御神籤。
「さぁ?」
「これ、大吉なんですよ。」
「そりゃ良かったな。
きっとご利益あるぞ。」
「ありがとうございます。」
その手をとり指を絡め体温を分けてもらう。
枝の様な指だがそれが良い。
遥登だから、それが良い。
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