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第1008話

1学年の現代国語の授業も終わり、時計は昼休みの時刻を指している。 移動教室先は暖房が入っていてあたたかかったが、廊下は寒い。 特に玄関へと向かう廊下は、まだ寒さに慣れていない身体はぶるっと身震いする。 あたたかな準備室へと向かって歩いていると、此方に向かって歩いてくるA組3人組の内2人に気が付いた。 2人も長岡に気が付き寄ってくる。 「こんにちは。 飲み物ですか。」 「ちはっす。 俺はパンです。 飲み物は三条。」 「寒いからあったかいの飲みたいなって。」 「パンか…。」 「先生も要りますか? ついでなんで一緒に買って来ますよ。」 田上の申し出に長岡はうーんと考えると頷く。 以前食べたデニッシュもペストリーも甘さ控え目で美味かった。 特にデニッシュは果物の甘さが生きていて、サクサクのパイ生地も美味い。 そういえば、デニッシュの果物は期間限定だったか。 あれからありつけていない。 「じゃあ、田上のおすすめでお願いします。 この前の上手かったし常連の田上が選んだのなら間違いないだろ。」 「ははっ、責任重大じゃないっすか。 でも、任せてください。 美味いの選んできます。」 田上はふらっと人の間を縫って移動販売の元へ消えていった。 残された三条と目が合う。 飲み物を買いに来たと言うが動かない。 「飲み物買いに行かないんですか。」 「行って、きます。」 さしずめ隣に居れて嬉しいって所だろう。 だが、増えてきた人に早目の購入を進める。 どうせなら田上より三条と少しでも一緒に居たいと思うのは、教師として隠さなければならない。 擦れ違い様に手の甲に自分のをぶつけ小さな声で囁いた。 騒がしさの増すこの場合で、その声が三条に届いたかは分からない。 だけど、きっと聞こえただろう。  “此処で待ってる”

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