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第1009話

長岡の予想は的中し、忠犬は直ぐ様飼い主の隣にやって来た。 猫可愛がり。 言葉通り自由気ままな猫に見返りを求めず可愛い可愛いと甘やかす様に、ひたすら恋人を甘やかし可愛がる長岡はその顔に何重にも教師の仮面を貼り付ける。 「吉田はどうした。」 「相川先生の所に行ってます。 飲み物買いにいくならついでに買ってきてってパンと飲み物頼まれました。」 「パシりか。」 2人で田上の頭を眺めながら担任と生徒を装う。 擦れ違う生徒から時々挨拶をされそれに返しながらも、三条との時間を堪能する。 まさか隣にいる生徒が恋人だなんて誰も思わないだろう。 「あぁ、そうだ。 面接のアンケートありがとうな。 読ませてもらったけど、詳しく書いてあって驚いたよ。」 「なるべく詳しくって書いてあったから書いたんですけど…。 そこまで書かなくて良かったんですか?」 「いや、有り難いですよ。 来年以降の推薦に使わせてもらいます。」 あたたかなミルクティーを両手で転がしながら三条は、なら良かったと長岡を見上げた。 此処だけまるで時間経過が違う様で、心までゆっくりする。 遥登といると何時も思う。 振り返ればあっという間に過ぎ去った時間も、その時にはとても穏やかにゆっくりと過ぎていった。 そんな時間も終わりを向かえる。 人混みの中で田上の頭が動いた。 頭の向きを変え、此方に向かってくる。 「三条、長岡、お待たせ。 いやぁ、混んでてさ。」 「おかえり。」 「田上悪かったな。 ありがとう。 いくらだった。」 美味そうなパンを見繕ってくれた田上とも話をしていると3人組の残りの1人がやって来た。 やっぱりこの3人組は3人揃っていた方が良いなと言うと3人は嬉しそうにした。

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