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第1013話
三条は本棚の前でじっくり背を見て、以前借りた耽美主義者の短篇集を手に定位置に戻る。
「その作者好きか?
よく読むよな。」
「んー…。
どうでしょう。
耽美って言うよりは自分勝手な男のエゴが詰まった作品って気もしますし、作品は面白いですけど、作者は…うーん…」
「へぇ。
面白い着眼点だな。」
「そうでもなきゃ、自分の理想を突き通そうと失明したりしないと思うんです。」
豊かな感情は時に斜めから見下ろす。
それが正解かどうかはまた別問題だが、その見方は面白い。
「まぁ、言ったもん勝ちな所はあるよな。」
「それ、先生が言って良いんですか?」
「今はプライベートですから。」
長岡はニヤリと口角を上げるとまた本へと視線を戻す。
暫く本を捲る音が部屋をに響いていた。
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