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第1016話

「ちゃんとあったまってきてください。」 そうは言ったが、そわそわしてしまうのは“待て”が原因だろう。 定位置に座るも手持ち無沙汰で天気予報を眺める。 明日も今日と同じで最高気温も最低気温も一桁らしい。 あたたかな室内では解らないが、窓の外ではしとしとと降る雨が肌寒さをより強調していた。 天気予報も終わり、ぽけっとしていると浴室から微かにシャワーの水音が聴こえはじめた。 さっきまで自分が使っていた浴室で今は恋人がシャワーを浴びていると意識すると、その事で頭がいっぱいになる。 別に今日に限った事じゃない… 風呂なんて毎日使うし、一緒に風呂だって入った…し… 思い出す恋人の裸体。 それも水の滴った肉感的なもの。 風呂上がりに出してもらった麦茶でやましい想像を飲み込む。 1度意識してしまうと振り払うのが難しい。 もう1口麦茶を流し込んだ。 朝のキスも身体に火を着けるには充分でほんの少し想像をしなくもない。 ぼんやり考えながら、ドライで抜け落ちた髪の毛を集めてごみ箱に捨てていく。 何時しかシャワーの水音はドライヤーの音に変わっていた。

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