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第1029話

「じゃ、また明日。」 「おう。 またな。」 乗換駅で一足早く運転をはじめる電車に向かい声をかけると、田上は参考書を片手に手を上げた。 三条もいくら推薦が終わったからと言って不合格の可能性を考え受験勉強の手は抜いていない。 自信がない訳ではない。 ただ、それだけで満足出来る程楽観的ではないだけだ。 それに、学校推薦者は早く合格を貰える分早くに勉強の手を抜いてしまい大学で差が付く。 そんな事では目標には追い付けない。 それまでと変わらぬ生活を続けていた。 同じものを片手に友人を見送る。 過ぎていく電車が巻き上げる風に背中を向け、ホームに設置された冷たいベンチに尻を着く。 夕暮れが早くなった。 16時を過ぎれば、辺りはもう薄暗く寒さもあって寂しささえ感じる。 そう言えば、週末は雪が降ると週間天気予報で言っていた。 もう、冬だな 雪が降り始めればあっという間だ 寒いと鼻先までマフラーに埋め、スピン変わりに挟んだ赤シートを引き抜くと参考書に視線を落とした。 冷たい風に身を縮こませなが、地元へと向かう電車をただ待つ。

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