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第1035話

向席の女教師が寒かったでしょと言いながら来客用の湯呑みに緑茶のパックを入れポットからお湯を注ぎ三条に手渡した。 熱さに弱い三条はその熱さにぴくっと身体を反応させたが、我慢してる。 分かりやすいと思うのだが、女教師は気が付いていない。 「ありがとうございます。 いただきます。」 右手で持ったり左手で持ったり、糸底と飲み口で支えたり、流石に助け船を出さないとまずそうだ。 冷えた手に熱々の湯呑みはこたえるのだろう。 飲む依然の話だ。 だが、何時もと変わらないそんな姿に心の底から安堵する。 「座って飲みな。 疲れたろ。」 「あ、ありがとうございます。」 腰掛ける様に促すと一目散に湯呑みを机に置いた。 熱かっただろと目配せをすると苦く笑う。 我慢なんてしなくて良いのに、人に気をつかってばっかりだ。 「電車で来たんだろ? 帰り大丈夫か?」 「なんとかなります。 すぐに終電って訳でもないですし。」 「三条くんどっち方面?」 「○○線です。 ○市です。」 「次の電車まで40分位か。 乗り換えは…大分待つけど、本当に大丈夫?」 壁に張られた時刻表を見ながら声をかけられた三条は大丈夫と言う。 この寒空の下何時間待つつもりなのか。 何処かで落ち合って送り届けようかと考えていると、女教師が話を続けた。 「先生、送ろうか?」 「そんな…大丈夫ですよ。」 「じゃあ、長岡先生は。 やっぱり同性の方が気楽だよね。 先生反対方向でしたっけ?」 「え…」 「え、あぁ、そうですね。 …でも、僕が送ります。 担任ですし、親御さんにご挨拶もしたいですし。 構わないか?」 「は、はい」 願ったり叶ったりの言葉に三条も驚き此方を見詰めた。

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