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第1039話

家族揃って晩飯を食べ、父親が閉店ギリギリで買ってきてくれたケーキ、それも『はるとくんおめでとう』と書かれたチョコプレートののった物を家族みんなで食べて祝ってもらった。 隣でにこにことケーキを頬張る優登に、嬉しそうに話す両親。 優しく祝福してくれた恋人。 そんな人達を見られる事が、合格した事以上に嬉しい。 お茶のおかわりに行っていた父が母の分のお茶を持って来たのが合図の様に2人は改まって此方を見た。 そして、口を開く。 「3人目!?」 両親からの告白に三条と優登は目を大きく見開いた。 3人目 兄弟が増える。 それは素直に嬉しいし祝福するが、心配もある。 「母さん大丈夫なの? その、歳的な事とか…」 「やだ、本当お父さんそっくり。 顔は可愛いのに、中はおっさんなの? お母さん心配。 お医者さんにも言われたけど今のところ大丈夫。」 優登は12歳、遥登は18歳 随分間が空いて兄弟が生まれてくる。 それも来年。 優登と母さんの腹が出てきた事について太ったのかなんて話していたけど、これで合点がいった。 そうか。 兄弟か。 「弟?妹?」 「性別は聞いてないから、産まれてきてからのお楽しみ。 お母さんも聞いてないの。」 「いつ生まれる?」 「春だって。 平成か、新しい年号かって位。 遥登と誕生日近いね。」 末っ子の優登は足早に質問をするとお茶をごくごくと飲んで、そっかっと呟いた。 三条も、優登が生まれる前は兄弟という存在がよく理解出来なかった。 母親の腹が大きくなっても、ふわふわと何処か夢の様な話で、そこに弟がいるなんて実感がなかった。 だけど、生まれてきたらとても可愛くて仕方がない。 優登もそんな最中にいるのだろう。 呆気にとられていて言えなかったが、きちんと言わなければ。 「おめでとう。」 「ありがとう、遥登。」 そう言って笑う母さんはとても綺麗だった。

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