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第1045話
長岡の部屋に広がるコーヒーの香ばしいにおい。
ドリップバックにお湯を落とす長岡の隣で三条はそれを眺める。
一気に気温の下がった週末、予報通り道路はうっすら白くなりあたたかいものが恋しくなった。
「はい、出来た。」
「ありがとうございます。
牛乳いただきます。」
「ん。
あ、俺も貰おうかな。」
そのまま台所で立ってコーヒーを飲みながらなんて事のない話をする。
自分の知らない学校生活を知れるのは楽しい。
特に田上吉田の話題は尽きない。
本当に仲の良い友達だ。
「あ、そういえば合格したら俺に願い事あんだろ。
なんだ?」
ふと、思い出した推薦前約束。
三条は顔を真っ赤にすると、俯いて顔を隠した。
それも、清潔な髪の間から見える耳も項も真っ赤にして。
「……正宗さんを、その……1日…一人占めしたい、です」
長岡は一瞬言葉の意味が理解出来ずきょとんとしたが、次の瞬間破顔した。
「なんだ、そんな事で良いのか。
1日と言わず2日でも3日でも一人占めしろよ。
あー、くっそ可愛い。」
さらさらの髪の感触を楽しみながら小首を傾げる。
「まずは何をしましょうか?」
「…あの……抱き締めて、欲しいです」
そんな事いくらだってするのに。
マグを置き、腕を伸ばして細くあたたかい身体を抱き締める。
すりっと頬擦りする三条の髪を梳き撫でると嬉しそうに口角が上がった。
甘えたなのにそれを隠す。
性格もあるだろうが付き合っているのに遠慮ばかり。
だから、こうしてくれるのが嬉しい。
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