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第1057話
用事を済ませ準備室に戻る途中、自販機前で細長い生徒が俯いていた。
自分の受け持ちクラスの生徒だとその細さと身長で解る。
と、いうより、その生徒ならすぐに解る。
じっと動かないその教え子に声をかけた。
「三条、なにしてんだ?」
「あ、先生。
こんにちは、あ」
人の顔を見るなり、あ…と何かを思い出したのか顔を真っ赤にしていく。
何を考えているのかはわからない。
たけど、真っ赤にする辺り全うな事ではない気がする。
なにはともあれ、体調不良の類いではなさそうで安心は安心だ。
「あ、あの、よかったら飲んでください…っ。
失礼しますっ」
持っていた缶コーヒーを押し付けると律儀に頭を下げて教室の方へと駆けていってしまった。
手渡されたコーヒーに長岡は首を傾げる。
なんだ…?
俺なんかしたか?
手渡された缶コーヒーは甘ったるいもので、間違えてしまったのではないだろう。
まぁ、これもらって飲むか
帰りに遥登が飲みそうなの買っとくかな
駆けていく三条の後ろ姿はもう見えない。
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