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第1059話
カチャ
「ただいま。」
休日の半分を使って行われる進学者向け補講も大詰めになり、放課になっても中々解放されなかった。
中には今そこを質問するか…という生徒もいて胃が痛い。
だが、部屋へと帰る足取りは真逆に軽い。
それもそうだ、一足早く受験から解放された恋人はそれには参加せず部屋で待ってくれている。
折角の外泊日だというのに長い時間1人にさせてしまったが。
ドアの開閉音に顔を覗かせた三条はにこにこしながら寒い廊下に出てくる。
犬に似たその姿を見ているだけで仕事の疲れが癒されていく。
「正宗さん、おかえりなさい。
お疲れさまでした。」
「ただいま。
部屋あったかくしてたか?」
「あったかいですよ。」
やわらかく笑う恋人に着いて部屋に入ると確かにあたたかい。
ちゃんと暖房を使っていた様で安心した。
先にコートと鞄をおろしに寝室へと向かおうとして、机の上に参考書が出ている事に気が付いた。
受験から解放されても変わらない。
「勉強してたのか。
熱心だな。
で、昼飯は食ったのか?」
「…正宗さんと食べたくて待ってました。」
「遅いけど一緒に昼飯食おうか。」
へへっ、と満更でもなさそうに笑う三条と過ごせる休日がやっとやってきた。
でろでろになるまで甘やかしてやる。
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