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第1060話
三条が作った炒飯を食べ終えた長岡は、ぱんっと手を合わせた。
「美味かった。
ご馳走さま。」
「お粗末様です。」
三条も最後の一口を口に運ぶとご馳走様でしたと頭を下げる。
早く洗い物を済ませて、長岡と一緒にゆっくりしたい。
食器を片付けようとした三条の腕を取ると自分の膝の上に引っ張られた。
床に尻を付く長岡の脚の間に引っ張られると、動けない様に腕を細い体に巻き付けられる。
「な…んですか。」
「遥登の恋のうたは?
クラス全員の前で言わされたんだ。
遥登も教えろよ。」
今週の古典の続きか。
確かにあれはドキドキした。
クラス全員の前で愛の告白にも似た事を言われ、
三条はうーんと考えてから口を開いた。
「山桜 霞の間より ほのかにも 見てし人こそ 恋しかりけれ、ですかね…」
「へぇ。
紀貫之か。
よく知ってんな。」
にやりと見馴れた顔にドキッとする。
「意味は?」
「…知ってるくせに」
「さぁ?」
春霞に隠れる山桜の様に微かに見えたあなたが恋しい…
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