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第1126話
暖房のない部屋に数分居ただけで随分と身体が冷えてしまった。
炬燵に入ろうと茶の間の戸を開けると、よく日の当たる窓辺にカーネーションの葉が繁っていた。
まだ蓬達に倒されてはいないようだ。
ほんの少し擽ったい。
それを横目に炬燵に入る。
ごろんと横になると脚に何かが触れた。
「柏、悪りぃ。
大丈夫か。」
中にいた先客は長岡の顔を見るなり欠伸をしまるくなる。
実家のにおい、あたたかい炬燵、蓬と柏。
まるで小さな頃に戻った様な感覚だ。
これが、懐かしいと言う感情なのか。
点けっぱなしのテレビから誰かの笑い声が聞こえる。
隣の台所で母親がコーヒーを淹れてるのか香ばしいにおいがする。
実家だと実感する。
猫の様にゆっくりと目を閉じ、ゆっくりと呼吸をしていると睡魔が襲ってきた。
ここのところ進路関係やテスト製作で忙しかったからか、思ってる以上に身体は疲れていたらしい。
もう目が開かない。
「正宗、コーヒー…」
またコートのまま炬燵で寝てしまっている息子に母親は仕方がないとばかりに眉を下げた。
廊下で開けてと鳴く蓬を室内に招き入れると蓬も炬燵にまっしぐら。
子供に戻った様に気持ち良さそうに眠る息子と愛猫達を起こさない様そっと昼食の準備をはじめた。
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