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第1129話
テスト前に噛みまくったが正直足りない。
先を歩く見慣れた頭を後ろから追い抜く際、トンっと手に甲をぶつけると一瞬目があった。
そのまま4棟トイレに入ると後ろの生徒も駆けてきた。
「よ。
寒いな。」
こくんと上下する頭が嬉しそうな色を滲ませている。
細い腕を引き個室に閉じ込めると、そっと腰を抱いた。
カーディガンやジャケットに厚みがあっても薄い腰だ。
「勉強は進んでますか。」
「はい。
そこそこ、ですけど…。」
色っぽい視線に耐えられなくなった三条は個室のドアを真っ直ぐに見ている。
そんな事構わずに長岡の指は肩口に付けられた歯形を思い出させる様に、ジャケットの上からなぞった。
自分のだというマーキングを思い出させる様にゆっくり。
「目標は?」
「え、と…現状維持、出来たら良いなと……」
三条が言う現状維持。
トップのままと言う事だ。
そんな優等生らしい答えの割りに、空気に色気が混じっている。
長岡は耳の後ろにちゅーっと吸い付き、耳縁を舐め上げた。
ねっとりと絡む舌にぞくっと快感が背筋を走る。
そう後ろの教師に躾られた。
「応援してる。」
「あ、りがとうございます。」
握り締めた手を長岡の大きな手が包む。
冷たいのはお互い様だ。
その手の甲にちゅと唇をくっ付け自分の前に差し出される。
三条はその手に自ら顔を近付けた。
チュ
「可愛い遥登。」
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