1138 / 1273

第1138話

「三条くんって、付き合ってる人いないの?」 「え…?」 ハンバーガーに齧り付こうとしていた三条は口を開けたまま、その言葉を聞いて驚いた。 田上は約束通り三条から奢ってもらったソーダを飲みながら視線を寄越す。 「いないよ。」 「えー、嘘だ。 いるでしょ。」 手を下ろすと、田上もコップを机に置く。 吉田は何か考えているのか上の空。 女の子はこの手の話が本当に好きだ。 目をキラキラさせながら問い詰めてくる。 まさか担任なんて言えねぇ 絶対に口が避けても言えねぇ… 「いないよ。 それに、俺のそんな話聞いても面白くないでしょ。」 「そんな事ないよ。 すっごく興味ある。」 「私もっ。」 「いないし、ハンバーガーあったかい内に食べようよ。 ね?」 何時もの笑顔で、ね?と問い掛けると、うーんと渋い声が返ってくる。 まだ納得はしてもらえないらしい。 「三条くん優しいからモテるでしょ。」 「全然そんな事ないよ。 未知子ちゃんは恋人いないの?」 「私もいないよ。 大学生の私に期待かな。」 前向きな未知子ちゃんはそう笑って言った。 前向きで強い。 友達と言う事を差し引いても、明るくて可愛いと思うし良いご縁があると良いなと願う。 自分の話から上手く主語が擦り変わり、三条はほっと胸を撫で下ろした。

ともだちにシェアしよう!