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第1156話

恋人と歩くのは新鮮で、ふわふわ笑うのにつられて頬が緩んでしまう。 愛おしい相手の笑顔は自分の世界をより鮮やかにしてくれる。 雪の色も、誰かに踏まれた山茶花の花弁でさえ綺麗だ。 「遥登、ちょっと待っててくれるか。」 「え? はい。」 食欲をそそるにおいの先に三条の好きそうな物を見付けた。 甘い物と思ったが、先にしょっぱい物を食べた方が甘味が引き立つ。 それに、見かけに反してガリガリの恋人はよく食べる。 つい餌付けと称して沢山食べさせてしまう。 三条をその場に待たせトンットンッと店先に急いだ。 向かった先はテイクアウトの串焼き店。 肉に野菜、貝もある。 ざっとメニューに目を通すとお薦めの文字を見付けた。 「牛串2本お願いします。 あと豚串も1本。」 注文と会計を済ませ、外で待っていると若い女性2人組が声を掛けてきた。 人工の甘いにおいを纏い流行りの服装に身を包んだ自分と同じ歳程か。 「あの、良かったら一緒に食べませんか? 一人で食べるよりみんなで食べた方が美味しいですよ。」 「すみません。 大切な人と来ているので。」 『大切な人』にあからさまに眉が下がった。 にっこりと作り笑いを張り付けると有無を言わさず自分の意見を押し通す。 うやむやに濁すよりはっきりさせた方が良い。 「そうなんですね…。」 「牛串と豚串のお兄さん、焼けましたよ。」 「ありがとうございます。」 横を通る際、一礼して大切な人の元へと戻っていく。 今日の最優先は…いや、これからもだが最優先すべきは遥登だ。

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