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第1162話

三条を和座椅子に座らせると、長岡も向かい側の同じものに座る。 何時もの定位置とは違い向き合うのはなんだか不思議な感じだ。 「先ずはなにすっかな。 なんかしたい事あるか?」 折角旅館に来ていてテレビというのも何か勿体無い。 食事の準備、風呂の準備もする必要がないのは有り難いが、全くの自由だと何をしていいのか迷ってしまう。 「あの、着替えを買いに…」 「あぁ、遥登の分も適当に持って来た。 悪りぃ、パンツも適当なの詰めてきちまった。」 「いえ、ありがとうございます。 じゃあ本当にする事ありませんね。」 「緊張してんのか?」 「…少し、」 「お茶でも飲んで落ち着けよ。 後で売店見に行くか。」 クスクス笑いながらも、手はお茶を煎れるためテキパキと動いている。 「お茶なら俺が煎れます。」 「任せとけって。 遥登の合格祝い兼ねてんだから、ゆっくりしろ。」 知らない部屋のにおいに爽やかな香りが混ざり、なんだかそわそわしてしまう。 長岡の部屋じゃない、ただそれだけなのに。 「どうぞ。 熱いからな。」 「ありがとうございます。 いただきます。」 と言っても熱くてすぐには飲めない。 これも、と差し出された茶菓子の包装を解いた。

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