1176 / 1273

第1176話

長岡は寝室に入るとごろんと畳に寝転がる。 フローリングとは違い、畳はやわらかく腰や肩を支える。 「和室で寝るなんて久し振りだ。 おー、畳のにおい。 実家はもう畳のにおいなんかしねぇからな。」 ベッドタイプの部屋もあったが、折角の機会だと和布団の方を選択した。 青々しく清々しいい草のにおい。 修学旅行先もホテルで、畳のにおいは久し振りだ。 「後は自分達でやるって伝えてあるからもう大丈夫だ。 沢山くっついてような。」 こくんと頷く三条の背中に尻尾が見える。 ぶんぶんと大きく振り、嬉しい気持ちを隠しきれていない。 おいで、と隣を叩くとゆっくりと近付いてきた。 その手をとっては自分の胸に抱き寄せると、尻尾は更に大きく揺れた。 従順な犬の様なその姿は何時見ても自分をしあわせにしてくれる。 「ふとん、くっ付けて敷こうな。」 こっくんと丸い頭が上下した。 どういう意味か位解ってるとは思うが、口に出して指摘したら離れてしまうかも知れない。 だから、口には出さない。 さらさらとした髪の手触りを楽しみながらほんの少し目を閉じた。

ともだちにシェアしよう!