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第1190話

「お世話になりました。」 「ゆっくりと出来ましたか。 またいらしてくださいね。」 チェックアウトは11時だという事で朝食後また温泉に入り、その時間を向かえた。 部屋を出る前にキスをされ、真っ赤に染まった頬を隠す様にマフラーをぐるくる巻きにされる。 からかわれたのかと思えば、寒くないかなんて優しく問われ頷けばまた影が重なった。 キスなんて数え切れない程してるのに、いまだ胸がきゅぅっとときめいてしかたがない。 ロビーに降りると、真正面の中庭の大木に今日も真っ白な花が咲いていた。 今日も雄大で穏やかだ。 つい足を止めてしまった三条に気が付き長岡も同じ物を見詰める。 そんな2人に声をかけてきた仲居に三条も頷いた。 本当にゆっくり出来た。 食事の準備も後片付けも、風呂の掃除もしなくて良い。 しかも食事は美味しい、温泉は極楽。 至れり尽くせりで羽を伸ばせた。 なにより、隣には恋人がいる。 それ以上のしあわせはない。 チェックアウトを済ませると、もう1度その大木を見た。 今度は白じゃなくて薄紅の花が見れたら良いな。 目にしっかりと焼き付ける。 「今度はあの木が花を咲かす頃にでも、是非またいらしてください。 足元お気を付けて。」 「ありがとうございました。」 寒い中玄関先まで出てきて頭を下げる仲居に三条達も頭を下げて門を潜った。

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