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第1191話

助手席には楽しそうにしている恋人、後部座席には土産に買った草餅。 一足早い春の味は帰宅後一緒に食べようと約束をした。 長岡の運転する車の中は心地好くて三条は何時もに増してにこにことしている。 「食事も美味しかったし、温泉も気持ち良かったし、すごく楽しかったです。 ありがとうございます。」 「どういたしまして。 遥登が楽しかったならそれが1番だ。」 「正宗さんは…?」 三条は長岡を見詰める。 そんな不安そうな顔をするもんじゃない。 「俺も最高に楽しい。」 「良かった。」 恋人が隣に居てさえくれればなんだって楽しいに決まってるだろ。 そう言いたげな笑みに三条はふにゃふにゃした笑顔を見せた。 生憎運転中でまじまじと恋人の顔を見る事は出来ないが、その声や話し方で本当に楽しかったと解る。 きっととびきりの笑顔を向けているに違いない。 それが解るだけ、多くの時間を一緒に過ごしてきた。 三条は何時もにこにこしているが、だからといって何時も楽しいのかと聞かれれば違う時もあるだろう。 実際、強姦紛いの事をされていたあの頃でさえ無理矢理感は否めなかったが笑ってはいた。 友人達に心配をかけたくなかったんだろうな。 一瞥するとその時とは打って変わって自然体の笑顔を惜しみ無く見せてくれていた。 「遥登。」 「はい?」 「愛してるからな。」 「…あの、俺も、その…愛してます。」 語尾にいくにつれ小さくなっていくがそれでもしっかりと耳に届いた言葉を何度も噛み締める。 「ベッドん中で言われるとすげぇ興奮するから、また言ってな。」 「また俺の事からかってますね。」 部屋に帰るまでが旅行。 寄り道をして遠回りをしてもう少しだけ外デートを楽しもうな。

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