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第1196話
三条は隣に置いたチョコレートの空き箱を見ながら口を開いた。
「あの、このチョコレートどうしたんですか?」
「ん?
バレンタインに買ったやつ。
遥登のチョコ嬉しくて渡しそびれるかと思った。
思い出して良かったよ。」
「バレンタイン…」
すっかり冷めてしまったスープをレンジで温め直し、冷ましてしまったお詫びに半熟とろとろの目玉焼きを焼きそばにのせた物を2人で啜る。
「そ、バレンタイン。
全部食っちまったけどな。」
「…美味しかったです。」
「そりゃ、良かった。
遥登キス好きだしな。」
「食べ方では…っ」
楽しそうな長岡に三条は何も言えない。
だって、本当に楽しそうで愛おししさの滲む顔に胸がきゅぅっとときめくから。
そんな顔見たら何も言えなくなるに決まってる。
「食べ終わったら、遥登から貰ったのも食おうな。」
「どう、やって…ですか?」
「んー?
どうやって食いてぇ?」
意地悪な笑みだってきゅんとする。
惚れた方が負けだ。
「キスで…食べたい、です。」
「ん。
キスしながら食おうか。
半分こ出来るし、な?」
上下した頭に長岡は触れると愛おしいしそうに目を細めた。
綺麗な目に愛しさが滲み出ている。
腕に触れ、その手を握った。
「約束、です。」
「ははっ、約束な。」
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