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第1198話
「三条、からあげちょーだいっ。」
「デニッシュの苺と交換な。」
「まーたやってる。」
高校生活最後の昼休みも変わらずのやりとりに吉田は笑った。
卒業式予行を済ませ午後からは学年集会、その間の貴重な休み時間を生徒達は思い思いに過ごす。
昼飯を食べ、くだらない話をし、写真を撮りあったりスマホを弄ったり。
明日がその日だと言われなければ分からない普段と変わらぬ空気に満ちた教室内は自由登校前と何も変わっていなかった。
「ぐぅぅ…」
「田上、早く苺と交換しろよ。」
「ぐぅぅぅ…」
「2つ買っても渋るかよ。
どんだけデニッシュ好きなんだ。」
「食べ納めだよ。
ここ来りゃ食えるけどな。」
高校最後の食べ納めだと季節のデニッシュを2つにチキンたまごサンド、パックのコーヒー牛乳を見下ろし漸く観念した田上は唸るのをやめた。
「…交換な。」
「やった!
はい、交換な。」
弁当箱からからあげが田上の口に運ばれると、三条もデニッシュから苺をひょいと取り口に放る。
まだ少し小振りで酸味があるが十分美味い。
予行日には3学年の食べ納めの為に苺デニッシュを持ってきてくれるパン屋に感謝だ。
「んめぇ…三条の母さんに感謝…」
「ははっ、また夕飯食べに来いよ。
優登も喜ぶし、弟妹も増えるから会って。」
「おう。
行く行く!」
「三条、俺も!」
「うん。
勿論、吉田も。」
友人にだけに使う砕けた口調で三条は約束なと笑顔を見せた。
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