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第1210話
教室に戻ってきたA組は何時もの騒がしさを取り戻した。
式典中、猫を被ってたのはお互い様だが長岡にはまだ猫を被る理由がある。
保護者だ。
高校生にもなれば人数は減るが、それでも沢山の保護者が式典に参加されていた。
「改めて、ご卒業おめでとうございます。
保護者の皆様も、おめでとうございます。」
長岡は背筋を伸ばしたまま頭を下げた。
「ホームルームをはじめます。」
まず、卒業証書の手渡し。
最近は卒業証書ホルダーに挟むものが主流になり、あのリボンの結ばれた筒ではない。
それを一人ひとりに手渡していく。
それを受け取る生徒の表情も様々だ。
嬉しそうだったり、やっと解放されるといった顔をしていたり、何時もと変わらない顔もいる。
ひとつ飛び出た頭は何時もと変わらずにこにこしながらありがとうございますと受け取った。
あの目は今日も綺麗だ。
頭を撫でたいのをぐっと我慢し次の名簿を呼んだ。
鼻を啜りながら写真を撮る保護者や、証書を見ながら友達と楽しそうに話す生徒達、次第にカオス状態へとなっていく。
まだ泣くには早いんじゃ…
いや、相当なご苦労があったんだろうな
クラス担任でさえ色々と考える事や頭が痛い事があるのだから、ご両親はもっと心労もあった筈だ。
部活の送迎や弁当作り、成績についてや学習塾の塾代、毎日の家事や炊事や反抗期。
進学や就職で親元を離れる生徒もいる。
嬉しくて寂しいのだろう。
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