「先生、今までありがとうございました。」 ｶﾞｻｯ ふわりと空気を色付ける麝香。 クラス委員長の手には大きな花束が抱えられていた。 「これ、みんなから花束です。 ひとり１本だから41本の薔薇の花束ですよ。」 「ひとり１本って。 プロポーズかよ。」 長岡のなんとも言えない声が教室に響いた。 囃し立てる声や、笑い声が溢れる教室。 やっぱり鼻を啜るのは保護者だ。 当人達より感極まっている。 「先生泣く？」 「泣いても良いよ！」 「泣きませんよ。 でも…ありがとう。」 色とりどり形や種類もバラバラの花はこのクラスの様にそれぞれ違う魅力と個性の集まりだが合わさるとすごく綺麗だ。 「もう１個も開けてみてよ。」 「良いのか。 …ネクタイ。 これ選んだの誰だよ。」 可愛らしいキャラクター物のネクタイが綺麗に箱にとじこめられていた。 三条もにやにやと楽しそうな笑顔を見せている。 教師をしていて良かった 誰ひとり欠くことなく今日の日を迎える事が出来て本当に良かった 良かった 本当に おめでとう 卒業、おめでとう