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第1215話

13時を過ぎて、13時半を過ぎて、生徒の数はどんどん減っていった。 代わりに、さっきまでの空気を残してどこか寂しそうな色が彼方此方に転がっている。 ロッカーもない。 下駄箱には靴さえもない。 誰が開けたのか、窓から冷たい風と共に微かな梅のにおいが入ってきた。 「先生、一緒に写真撮ってもらえますか。」 「あぁ、勿論。」 行列をつくっていた長岡の目の前はやっと空いた。 入れ替わり立ち替わり女の子達は長岡の隣に並ぶと記念撮影をしてずっと声をかけられなかった。 三条は隣に並ぶとカメラを起動させる。 「良いのかよ。 優等生。」 「何がですか?」 2人が入る様にスマホを構えると、担任は砕けた口調で話し掛けてきた。 「2人だけで撮ってよ。」 「やっと俺の番になったんですよ。 先生、モテるからずっと順番待ちでした。」 「それは俺の台詞だろ。」 「え…?」 カメラに写る、やわらかく細められた目は恋人のものだ。 「友達沢山出来たんだな。」 画面に映る三条の表情も変わった。 「はい。」 「恋人も出来てたりしてな。」 「…格好良いんですよ。」 その瞬間を切り取ったスマホを持つのとは反対の手を握られた。 まだ誰かの話声が聞こえるのに。 まだ誰かの足音がするのに。 その手を引かれくっ付くと長岡は1等綺麗な顔をした。 「遥登、卒業おめでとう。」 小さな声だったが頬がくっ付く程の距離で贈られた祝福の言葉はしっかりと三条の耳に届いた。

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