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第1216話
机の上には真新しい花瓶に生けられた沢山の薔薇の花が芳香を広げていた。
香水やファブリックミストとも違う天然のものは甘くても長岡に似合っている。
「正宗さん、ホストみたいでした。
笑いを堪えるの大変だったんですよ。」
「笑う要素がどこにあんだよ。」
やっと一段落付いた土曜日、何時も通りの休日を過ごしていた。
三条がにこにこと楽しそうに話すのは前日の卒業式の話。
寂しい筈の日を楽しい楽しいと笑い話に出来るのは良いが、なにせ自分の話題だ。
肉付きの悪い頬を両手で挟みむにむにと遊ぶと、三条はとうとう笑い出してしまった。
「だって、先生に見えなくて。
完璧そっちの方でしたよ。」
「一張羅っつったろ。
スーツ1着でもこの身長だと大変なんだぞ。」
でも、とっても格好良かったと付け加えられ長岡も満更でもない。
自分の容姿に興味はないが恋人に好きと言ってもらえるのなら話は別だ。
げんきんにこの顔で良かったと思う。
楽しそうな口元に吸い付くとぽわっと三条の空気が色付いた。
それが可愛くて次は赤くなった目尻。
横の髪な手を差し入れ、撫でる様に梳くと遥登の清潔なにおいがする。
遥登に似合ういいにおいだ。
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