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第1229話
じゅわわっと台所いっぱいに広がる醤油の焦げる香ばしいにおいに、三条は長岡の手元を凝視する。
「味見するか。」
肉の一切れを箸で摘まむと、三条の目の前に突き出した。
熱々のそれを三条が食べられないのは承知の上だ。
だから突き出すだけ。
三条はふーっと冷ますと恐るおそる口にした。
途端、ぱっと表情が変わる。
「濃くねぇか?」
「んまいです!」
「ははっ、んまいか。
もう1つ食うか?」
新玉ねぎをいれて作った生姜焼きは三条のお気に召したらしい。
皿に豪快に盛り付けると三条はわくわくした顔で味噌汁をよそいはじめた。
生姜焼きに千切りの春キャベツ、わかめと豆腐の味噌汁に残りの豆腐とトマトでカプレーゼ。
それから白い飯。
手が掛かっている訳でもないが、三条が好きだと言ってくれるし気持ち良い位よく食ってくれるから作りがいがある。
「冷めない内に食おうな。」
「はいっ」
薔薇の花を目の前に、何時も通り2人で並んで手を合わせる。
三条が卒業してもなにも変わらない光景だ。
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