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第1230話

出勤して準備室へと向かう途中、右に曲がれば準備室だが、つい左を見てしまう。 がらんとした空き教室はもう2週間も過ぎれば今の2学年で騒がしさを取り戻す。 だが、その声はあの子達のものではない。 去年、村上が言っていた事が漸く理解出来た。 あの言葉が身に染みる。 何よりも大切な教え子は自分のクラスから旅立っていった。 こらからより大きな世界へ行く。 勿論それは喜ばしい事だが、寂しくないも言えば嘘になるだろう。 自分は、ちゃんとあの生徒達ときちんも向き合って来れたか不安だ。 何かを残せたか不安だ。 『長岡先生、おはようございます。』 『先生っ、一緒に写真撮ろう!』 『長岡、おはーっ』 『彼女いんの?』 自分は両手から溢れる程に貰ったのに。 『正宗さん』 あの笑顔が目蓋の裏に焼き付いている。

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