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第1238話
新聞の上にスマホを置いて流れていく会話を眺める。
部屋はなんも変わってないから引っ越しはしないのか
それは良かった…
また一段と本の詰まれた部屋は以前と変わらずだ。
本人は積ん読が増えたと言うが、嬉しそうに新刊を買ってくる姿は子供みたいで可愛い。
本当に本が好きなんだなと解る楽しそうな顔。
特に贔屓の作品は良い顔だ。
自由登校中たまに長岡の部屋に入り浸っては、それを読み進めていた。
それに、最近は三条が好きそうな本も増えた。
実家に置いていたのを持ってきてくれたらしい。
だけど、学校に長岡が居ない事がいまいち想像出来ない。
自分達ももう卒業して籍はないのだが、1年の頃からずっといた先生だ。
そりゃそうか。
“居る事”が“当たり前”だと思い込んでいた。
もっと大切にすれば良かった。
4棟トイレでの逢い引きも、擦れ違い様に甲をぶつけるのも、大切にすれば…。
『三条、なにしてんだ?』
『3人組、ほんと仲良いな』
一線を引きながらも、きちんと生徒をみている。
授業も解りやすくて、質問に行けば嫌な顔をする事なく丁寧に教えてくれた。
俺の目標。
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