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第1240話

久し振りの学校のにおい。 ざわざわと人の声がするのは、体育館への移動時間だからだ。 その波の後ろを歩き、私服でスリッパを借りて体育館へと向かうと、ステージ上には数脚のパイプ椅子が並んでいた。 卒業生の顔を見て教師達は久し振りだな、進学先は決まったかとお決まりの台詞があっちからこったから聞こえてくる。 「あ、三条くん。 長岡先生への挨拶ですか…?」 「相川先生、お久し振りです。 はい。 3年も受け持ってもらいましたから。」 「寂しく…なります、ね…。」 長岡と仲の良い生物教師は寂しそうにぽつりと吐いた。 俯く相川に三条はそうですね、と返す。 それしか、返せない。 相川の友達のどんぐりは、去年の夏に亡くなった。 シンとした生物室に違和感を感じ、準備室にいる相川を訪ねたら以前の生物部部長とどんぐりと共に撮った写真が大切そうに飾られていた。 長岡が離任し、相川は本当に寂しいのだろう。 「たまに遊びに来ますね。」  「はい…、待ってます」 その声に被さる様に、生徒指導主任が始めるぞと声をあげた。

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