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第1241話
離任式は淡々と進んでいった。
1、2学年の後ろで同じ様に床に腰をおろしているクラスメイト達と式に参加するが、式と言っても校長の長い話と離任される先生方が短く挨拶をするだけ。
それでも、卒業したといっても担任の離任だ。
一目見ておきたい、と他クラスだった女子生徒もチラホラといた。
改めて長岡は人気だったんだなと思い知る。
壇上で背筋を伸ばしている担任は挨拶をする際に、元A組の姿を見ながら頭を下げた。
今日も使ってくれているネクタイピンがキラリと光る。
そして、何も分からない自分を慕ってくれてありがとう、と言葉を結んだ。
簡潔だが、長岡らしい。
囃し立てるクラスメイトも気にせず教師の顔でそこにいる長岡は、凛としている。
見知った姿をしっかりと目に焼き付ける。
次の教師も短く言葉を締め式はあっさりと終わった。
拍手の中、離任される先生が職員室へと一足早く帰っていく。
ただ、それだけの式だ。
だけど、大切な恩師の離任式だ。
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