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第1242話
みんなでそのままスリッパをパタパタ鳴らしながら準備室に突撃すると、随分と片付いた机に向かって長岡は仕事をしている最中だった。
「長岡先生、ちわす。」
「こんにちは。
来てくれたのか。
ありがとうございます。」
「挨拶だけっすよ。
あ、大学合格しました。」
「俺もー。」
「おめでとう。
良かったな。
安心したよ。」
でも、五月蝿くすると他の先生方に迷惑だから隣行こうかと進路指導室へと場所をずらした。
なにも変わらない進路指導室で、近状報告を聞きながら長岡は1人1人に祝福の言葉をかけていく。
挨拶に来たはずが、報告になっていくが構わず長岡はうんうんと聞いている。
「で、先生は彼女いんすか?」
「プライベートは秘密です。」
「最後までそれかよ。」
「やらしー」
「やらしくありません。
なに想像してんだ。」
きっちりとスーツに身を包んだ担任と話すのはこれが最後だ。
プライベートで会っているから自覚はないが。
最後なのか。
「三条は?」
「え?
ごめん、ぼーっとしてた…」
「恋人だよ。」
目の前にいる恋人は右口角を僅かに上げた。
「…秘密。」
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