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第1256話

3月31日。 とうとう年度最後の日。 だが、そんな事は関係なく今日も三条は長岡の部屋を訪れていた。 また一層本の増えた部屋には新しい赴任先に持っていく前の荷物の他に、前の学校で捨てるに困ったものが隅に纏められている。 それから、カウンターにはクラス写真が飾られていた。 そんな部屋で、家主は三条の髪を撫でくり回しながら本を読んでいる。 癖と言えば聞こえは良いがされる方は……三条もされるがまま嬉しそうに本を読んでいるから良いのか。 雨が降ったり止んだり、晴れたりと1時間の中でもくるくる変わる天気を気にもせず黙々と本を読み耽る。 ふとその手が止まったかと思えば、パタンと本を閉じた。 「寒ぃな。」 「なにか、あったかいの持ってきましょうか?」 「んー、それより。 遥登、隣おいで。」 ぽんっと叩かれたのはソファの上。 嬉しそうな顔をした三条は、失礼しますと声をかけてからゆっくりとそこに腰掛けた。 それでも足りない長岡は三条の細い腰を抱き寄せもっとくっ付いた。 2人分の体重を支えているソファが軋み、子供体温に長岡は頬を緩める暖をとる。 「あったけぇ」 「俺よりブランケットの方があったかいですよ。」 「やっぱ人肌だろ。 肉付きは悪いけど、子供体温だしな。 ほらあったけぇ。」 するすると服の中に入り込んできた冷たい手に肩を跳ねさせるもされるかままだ。

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