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第7話

「とりあえずアイシングして様子を見ましょうか。蹴られたところ見てたけど、大して力は入ってなかったから、ただの打撲だと思います。冷やして腫れと痛みが引かなかったり気分が悪くなったりしたら、その時は病院へ運べばいいかと」  バーテンダーはそう言うと、桐島と多田に視線を移した。立ちあがり、ふたりのまえへ行く。 「こいつは俺らが見ておく。女の子は遅くなると危ないし、もう帰った方がいい」  安心させるように笑みを浮かべれば、桐島は男の笑顔に魅せられたようになった。 「でも……大丈夫なんですか?」 「大丈夫だよ。喧嘩の手当てはなれてるから。日坂(ひさか)さん、この人たち送ってってもらえますか?」  後ろに控えていた店主に声をかける。日坂という髭の店主は頷いた。 「ああ、そうだな。彼は我々が面倒みるから。君らはもう帰った方がいいよ。僕が通りの入り口まで送っていくから」  陽向だけをおいて帰るのを、どうしようかとためらう友人に、陽向は痛みをこらえて声をかけた。 「……俺、大丈夫だから。少ししたら、歩けると思うし。先に帰ってていいよ」  にこりと笑って、手をあげて見せる。陽向が笑ったことで安心したらしく、ふたりは日坂の言うことに大人しく従って店を出ていった。  三人がいなくなると、バーテンダーは「ちょっと待ってろ」と言い残して店の奥に入っていった。店には、カウンターに客がひとりいるだけだった。 「上城(かみじょう)さん、なにがあったの?」  客が尋ねてくる。 「ちょっとそこで、いざこざがあったんですよ」  上城と呼ばれたバーテンダーがそれに答えた。すぐに手にバスタオルと、密封式ポリパックに氷水を入れたものを持って陽向の元へと戻ってくる。 「俺も金的打撲は経験あるけど、なんともなければそのうち痛みは治まる。けど、悪くなる一方なら、内出血か睾丸破裂してるかもしれないから、そうしたら病院へ行かないと」  怖い台詞を言われて、小心者の陽向は竦みあがった。 「……まじですか」 「まず冷やして三十分ほど休んでみな」  男は陽向の腰のあたりにバスタオルをかけて覆うと、「自分でできる?」と訊いてきた。 「……はい」  陽向は力の入らない手で、コットンパンツのまえ立てをくつろげた。上城からアイスパックを受け取り、タオルの下へ押し込めようとしたが、うまくいかず手が滑ってしまう。 「あ……」

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