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第11話 お礼にお店へ

 翌日、学校に行くと、桐島がすぐに話しかけてきた。 「陽向、昨日はあのあと大丈夫だった?」 「うん、なんとか一晩休んだら楽になった」  息子の打撲を女の子と話題にするのは恥ずかしかったので、かるく笑って済ますと、桐島も「ならよかった」と笑顔になった。実は今もまだ少し痛みは残っていたが、そのことは黙っておく。 「あのバーテンダーさん、すごく強くてカッコよかったわよね」  桐島がうっとりした顔で、思いだすようにしながら言った。 「だね。あの人がいなかったら俺らどうなってたことか」  昨夜の騒動が脳裏によみがえり、陽向はぶるっと肩を震わせた。  上城が助けてくれなかったら、本当に三人はあれからどうなっていたか。強請られて、有り金全部を取られていたかもしれないし、それ以上に悪いことになっていたかもしれない。 「ねえ、お礼しに行かない?」  教室に入りながら、桐島が提案してくる。 「うん、それはしなきゃね、と思ってる。でも桐島は女の子だし危ないよ」 「早い時間なら、大丈夫なんじゃない? あたし、通りを突っ走っていくわよ」  明るくて活発な桐島は、昨夜の出来事にもひるんだ様子はなくて、拳を徒競走の格好に持ちあげて見せてきた。  蹴られて苦しんだ陽向にしてみれば心配だったが、きっと女の子にはあの悶絶するような痛みは分からないのだろう、お宮通りに向かうときも好奇心を見せていた恐いもの知らずな性格に、陽向は苦笑するしかなかった。  多田と三人で全速力で駆け抜ければ行けるわよ、と桐島が言うので、まだ教室に現れていない多田にメッセージを送ってどうするか訊いてみることにする。用件を送れば、しばらくして返事がきた。 『わりい。俺、もうあそこには行きたくない。またあいつらに会ったらどうすんだよ。パスさせて。バーテンダーに世話になったのはおまえだろ? だったら、おまえだけ行けばいいんじゃね?』  というなんとも自分勝手な内容が送られてくる。陽向は画面を確認しながら呆れてしまった。桐島にスマホを見せれば、彼女もドン引きする。 「多田とは友達やめるわ」  ばっさり切り捨てた桐島と共に、仕方なくふたりだけでもう一度お宮通りに行くことに決めた。  その日の講義が終わったあと、桐島と話しあって購入したお礼の日本酒を手に、お宮通りの入り口に再び立つ。

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