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第12話

 まだ夕方の、陽の光が残っている時間だった。けれど通りの奥はやはり薄暗くて見通しが悪い。 「やっぱ、桐島は行かない方がいいよ。俺だけで桐島の分もお礼言ってくるから」 「えー。でも、あたし、あのバーテンダーさんに会いたいなあ」  ふたりでどうしようかと迷っていたら、後ろから「あれ? あんた?」と声がかけられた。昨日のストリート系の男らかと、一瞬ひやりとする。  振り向けば、そこには栗色の髪をした青年がひとり、買い物袋を手に立っていた。 「あ……、えっと、ども」  陽向は、なんとなく見覚えのある顔に挨拶をした。 「昨日のお兄さんだろ? あれからどうなった? 息子さんは元気?」 「あ……はい」  それで、この青年が上城の店のアルバイトだと思いだした。陽向が店を出たときにカウンターの中で働いていた人だ。 「おかげさまで、元気を取り戻しつつあります」  ぺこりと頭をさげれば、青年は笑いながら桐島と陽向を交互に見てきた。 「どうしたの? こんなとこで」 「実は、その、今からお店まで行こうかなって思ってたところなんです。けど、彼女も連れてって大丈夫なのかどうか心配で」 「ああ、そうなの」  青年は桐島に視線を移して、まじまじと眺めた。 「そりゃあ、こんな可愛い子連れてたら心配だよな。いいよ、俺が一緒に行ってやるから。そしたら大丈夫だよ。この辺の事情はわかってるし」  可愛い子、と言われて桐島が嬉しそうな表情になる。確かに桐島は、学校でも評判の美人だった。  手招きしながら通りの中に入っていくので、陽向と桐島は顔を見あわせてから、付いていくことにした。上城と同じ店で働いている人と一緒なら安心だろう。  昨夜と同じ道を、青年は平気な顔で進んでいく。周囲を見渡しながら、恐る恐るあとをつけていく陽向と桐島を振り返ると、仕方ないな、というように苦笑いした。 「あんたら外の人から見たら、ここの通りは怖く見えるかもしれないけど、俺ら昔からここに住んでるもんからしたら、このへんは古い庭みたいなものだからさ」  陽向と桐島に歩調をあわせるようにして、歩く速度をちょっと落とす。 「そうなんですか」

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