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第13話
「うん。ここの通りは昔から寂れてて、以前は、地元のやくざも相手にしないような忘れられた場所だったんだよ。
けど、駅表が開発されて商店街をあげて浄化を始めたもんだから、行き場を失くした奴らがこっちへ流れ込んでくるようになってさ。
だから昨日みたいな奴もうろつく様になって、通りの評判も落ちて困ってるんだ。あいつら、最近この辺で悪さし始めたガキどもなんだよ。
不法な商売したり、色々問題起こすから、ここいらの店主仲間で協力して注意してるんだ」
「そうだったんですか」
だから、昨夜も上城らが助けに来てくれたのか。
しばらく青年と話しながら通りを進んでいけば、覚えのある『ZION』という看板が見えてくる。
「ただいまですー」
青年が声をかけて樫の木の扉を押した。中から、「おう」という男の声が返ってくる。
「上城さん、お客さん連れてきましたよ」
青年が先に店に入り、続けて桐島と陽向が、うかがうようにしながら店内に足を踏み入れた。ふたりを見て上城が、おや、というように眉を持ちあげる。
「あの、昨日はどうもありがとうございました」
陽向がカウンターの中にいた上城に頭をさげた。
「ああ。あれからどうだった?」
上城は陽向を見ながら訊いてきた。
「……はい。おかげさまで、なんともなかったです」
「そうか。ならよかった」
上城のまえまでいって、お礼ですと日本酒の入った箱を手渡すと、驚いた顔をする。
「こんなのしなくていいのにさ」
「いえ。お世話になったんで、あの、気持ちだけですが」
「悪いな。だったら、そこ座って。せっかく来てくれたんだから、一杯おごるよ」
「え、でも」
桐島とふたりで揃って恐縮してしまう。お礼に来ただけなのに、おごってもらうなんて申し訳ない。
「一杯だけだよ。それ飲んだらすぐに帰れよ。女の子にはやっぱ、最近、この辺は遅くなると物騒になるから」
と言われて、それならばと礼を言ってふたりでスツールに腰かけた。メニューをだされたので、陽向はハイネケンの小瓶を、桐島はバレンシアというカクテルをオーダーする。
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