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第22話

 改めて認識すれば一瞬にして頭に血が昇ってきた。恥ずかしさと申し訳なさが怒涛のように押しよせる。しかも礼を言いに行ったはいいが、その後も平気な顔をして、何度か店を訪問している。桐島のためとはいえ、自分は拒否もせずホイホイついていってしまっていた。  カウンターに座り、酒を飲んで呑気に話しかける自分を、上城はどう思いながら眺めていたのだろうか。彼のことを格好いいなあと見ていた自分はもしかして、一物を触られて、その気になって浮かれているホモとでも勘違いされたんじゃないだろうか。  サーッと音を立てて、昇った血が足元へ引いていく気がした。  ――だから、嫌われたんだ、俺。 「……そうか。そうだったんだ」  上城は、桐島のことが好きになって、それでまとわりつく自分を邪魔者と思いだしたのかもしれない。気に入らない男が、気に入った女の子にじゃれついていたら、そりゃあ腹も立つだろう。上城が自分にはそっけないのはそのせいか。  窓ガラスに手をついて、どんよりと落ち込むと桐島がダメ押しのように言ってきた。 「そうだといいんだけどね。だからさ、陽向、まえ以上にあたしと仲よくしてくれない?」  意味不明の頼みごとに、うなだれていた頭をあげる。 「……なんで」 「仲のいいところを見せて、上城さんのライバル心を煽るのよ」 「へえ?」  首を傾げて、桐島の顔をのぞき込む。 「つまり、陽向が当て馬になって、あたしを好きな振りすれば、上城さんは取られたくないと思って、ふたりの仲がぐっと進展するじゃない!」  拳を握りしめて力説する桐島に、ショックで脱力した陽向は「はあ」とだけ返事をした。 「ね、陽向、協力してよ」 「ああ……まあ、いいけど」  ありがとう、と陽向の腕を掴んで振り回す桐島に、力なく笑いかける。  桐島には以前女の子を紹介してもらったことがある。その子とは結局うまくいかなかったけれど、ここで借りを返せるのなら恩返しに協力してやってもいいと思えた。  ふと窓の向こうに目をやれば、ヘッドギアを外した上城が、離れた場所からこっちを見ていた。

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