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第27話
「可愛いと思いませんか、彼女」
テーブルに身をのりだして、尋ねてみる。
「え?」
上城が目だけをこちらに戻す。
「学校でもモテるんですよ。狙ってるやつ多いし」
「へえ」
あまり興味のなさそうな返事に、桐島のことを気に入ったから見ていたんじゃないのかと不思議に思った。
自分に対する態度も、妬いていて、だから冷たいんじゃないのか。
そうして、桐島に当て馬になって好きな振りをしてくれと頼まれていたことを思いだす。だったらもうちょっと彼女を売り込んで、上城の本心を見てみたいという気持ちになった。
「性格も明るいし、一緒にいて楽しいし。恋人にしたいタイプだと思いません?」
桐島のことを褒めると、上城は冷めた目で陽向を見てきた。
「あんた、彼女のこと、好きなの?」
「えっ」
話をこっちに振られて、戸惑った声が出る。けれど好きなのかと聞かれたら、好きだと答えなくてはならない気がした。当て馬なのだから。
「まあ、……好きですよ」
「だったら、あんたと彼女で付きあえばいいじゃん。俺に振んなよ」
不機嫌な顔になって、空になったジョッキをテーブルにドンとおいた。
肘を組んで、相手も身をのりだすようにしてくる。
「彼女は確かに可愛いと思うけど、俺の趣味じゃないな」
「……え?」
「俺はもっと、別のタイプが好みだから」
「別の?」
「そう」
問いかける表情になった陽向に、さらに顔を近づけてくる。陽向は目を剥いて、相手の鋭い瞳が近づいてくるのを見つめた。
「俺はどっちかって言うと、可愛い女の子よりも、可愛い男の方が好みだから」
へ? とあけた口が間抜けに固まる。
「脇腹がやわらかくて、からかいがいのあるようなね」
その瞬間、怒っているとばかり思っていた眼光が、スッと色を変えた。
鋭いのは変わらなかったが、内に挑むような熱を湛えだす。陽向は魅惑的な双眸から目が離せなくなった。
上城は口を引き結び、目だけでなにかを訴えかけようとするように陽向の顔をじっと見つめてきた。
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