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第43話 当て馬出動要請

 陽向が断り続けたせいで、翌週から桐島からの誘いがぱったりと途絶えた。  あれほど三日おきにザイオンに行こう行こうとメッセージをよこしてきた彼女から、一緒についてきてという文字が消えた。  けれどボクササイズの報告は定期的に送られてきている。『今日はバンテージの巻き方教わっちゃった』とか『練習用DVD借してもらった』などという仲睦まじそうな文が、カピパラのスタンプと共にスマホに届く。  桐島はひとりでも店の方に通っているらしかった。相変わらずアキラの送迎つきで。  陽向は居酒屋で三人で飲んで以降、ザイオンには足を運んでいない。桐島に付き添うのをやめたので、行く理由がなくなってしまった。  普通は気に入った店ができたなら、理由がなくともふらっと訪れたりするのかもしれないが、陽向には後ろめたい思いがあったから、足が遠のいてしまっていた。  あそこに行くのは、どうしても憚られてしまう。  上城の考えていることがよくわからない。桐島のことは趣味じゃないと言っていたのに、陽向が当て馬になったとたん、こっちに対する風当りが強くなり彼女のことを狙うとライバル宣言をしてきた。  けれどそう言うのなら、自分だって彼のまえでは意味不明な振る舞いをしている。取り散らかった感情そのままに、憧れの眼差しを向けてみたり急に視線を避けてみたり。  しかしそれは陽向が自分の思いとは裏腹に、桐島のことは友人でしかないのに、片想いしているような演技をしているせいだ。  上城には会いたい。そっけなくされても仏頂面で応対されても、ただからかわれてるだけでも、顔を見たいという気持ちはある。ザイオンの雰囲気も好きだし、あそこでゆっくりとすごしたい。それでも、足を向ける勇気がなかった。  週末の夜、陽向は自分の部屋でなにをするともなく時間をつぶしていた。  スマホをいじりながら、ベッドに寝ころがりぼんやりとすごす。上城のことを考えつつもうわの空でゲームアプリをしていたら、機械がメッセージを受信した。  かるい電子音が流れて、画面上に『上城礎』という文字が現れる。 「え?」  がばっと起きて、すぐにゲームを打ち切った。メッセージをひらくと、そこには確かに上城からの伝言があった。

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