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第44話

 上城とは以前アドレスの交換をしている。桐島が上城に頼んで、ふたりが交換していたときに隣にいた陽向は、流れで自分も参加させられていた。しかし今までメッセージが来たことはなかったから驚いた。 『月曜日の映画、あんたも来るの?』  端的な、意味不明の文言が表示される。陽向は首をひねった。なんのことを言われているのかよくわからず、だからそのまま返信した。 『なんのことですか?』  すぐに返事がくる。 『月曜、ボクササイズのあと、レイトショーの映画に彼女と行くことになった』  そうなのか、と文に目を通しながら、しかし自分に参加を尋ねてくる理由がわからなかった。上城も桐島も、陽向に声をかけていないのなら、これはデートになるのではないか。  考えていたら、またメッセージがかるい音と共にポップした。 『あんた彼女のこと好きなんだろ? だったら邪魔しに来いよ』 「……へ?」  思わず声がもれる。  やっぱりよくわからない。なぜこんな誘いが来るのか。  ふたりが映画に行くほど進展しているのなら、陽向がわざわざ割り込んで邪魔をする必要などないはずだ。  うまくいっているのなら、それはそれで寂しさは感じてしまうけれど。  陽向はとりあえず桐島にメッセージを送って、向こうの仲がどれだけ進んでいるのか確認を取ろうとした。もし、まだ桐島が当て馬を必要としているのなら行った方がいいのかもしれないし。  桐島に映画について尋ねるメッセージを送信する。まめな彼女からはすぐに返事が来て、会話が始まった。 『なんで、映画のこと知ってんの?』 『俺、行く必要ある?』 『ないない。来なくていいよ。せっかくふたりきりで行くことになったのに』 『ですよね』  と話していたら上城からまたメッセージが来た。上城と桐島は、分けているグループが違うので、会話がまざりあうことはない。 『彼女には言うなよ。偶然装って来いよ。九時に駅まえの映画館だからな』 「まじ?」  もう言っちゃいました、とは送れずに画面を見たまま固まってしまう。タイミングが悪かった。仕方なく『その日はちょっと用事が入っているので』と返信する。

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