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第45話
『来いよな』
と間髪あけずに脅しのような一文が現れた。
メールの文字なのに威圧感があふれている。体育会系ですかと心の中で突っ込みを入れながら、どうしたらいいのかと焦り始めた。桐島にも映画のことは訊いてしまったのだし、偶然は装えない。
なんて書き込もうかと、人差し指を文字盤の上でうろうろさせる。そうしていたら新たなメッセージがぽっと顔をだしてきた。
『ていうか』
と、つなぎの言葉が出現する。文面からも不機嫌が感じ取れて、小心な陽向はドキドキしてしまった。
『なんで最近、店に来ないの?』
「へ?」
画面と会話する勢いで、スマホに顔を近づける。いきなり違う話題を振られて、けれどこちらの問いにも答えることができず狼狽えた。しかし店に行っていない理由を言うわけにはいかない。
うまい返しはないものかと、ない知恵絞って考える。しばらく悩んでいたら、相手は焦れたのか、また物騒な台詞を打ち込んできた。
『月曜来ないなら、彼女喰っちまうよ』
「……」
スマホを握りしめ、挑発的な言葉に画面を凝視した。
喰っちまうってどういうこと? 関係しちゃうってことをほのめかしてるの?
また胸が捩じれるように、ぐりっと痛んだ。
桐島と上城が、そういう関係になる。恋人同士になるのか、それとも上城は遊びで桐島を相手にしようとしているのか。けれど、どちらにしろ陽向のあずかり知らぬ仲になるのだ。
しかし、とあいた手で髪をかきあげながら考える。桐島は、そうなることを望んでいた。上城と付きあうこと。これが彼女の願いだった。
ならば、どうぞどうぞと自分は身を引くのが、一番いいのではないか。
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