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第80話

「今はどこかから、得体のしれないドラッグやハーブとかを仕入れて、売り歩いてるって話。本人は合法だって言ってるらしいけど。  危ないこともしてるようだし、できれば関わりあいになりたくないけど、お宮通りでも商売しやがるから。どうしても上城さんとも顔を突きあわせることになっちゃって」  男とのことを話すと、アキラは口を真一文字に結んだ。上城と畠山との間には、色々と難しいしがらみがあるらしい。 「それで、確か、三年ぐらいまえだったかな。あの最低野郎が、付きあってる恋人に無理矢理ウリやらせようとして、その相手が泣きながらうちの店に逃げ込んできたことがあって」  その話題に、陽向は思い当たる人の名をあげた。 「もしかして、ナツキって人……」 「あれ、それも知ってるんですか」  アキラが意外だという顔をする。 「上城さん、小池さんにはなんでも話すんですね。あんまり自分のこと他人には喋らない人なのに」  知らなかった、というように仲のよさを指摘されて、陽向は思わずグラスに視線を落とす。 「……それでナツキって人はどうなったんですか」  上城との間柄については言及されたくなかったので、陽向は先を促した。  ナツキという人に関しては、どうしても知りたいという気持ちが働いてしまう。どういういきさつがあったのだろうかと興味がわいてしまうのだった。 「ナツキさんは、この近くのバーで働いてた人なんです。畠山とトラブったあと、バーをやめてしばらく上城さんがこの上の部屋に匿ってたんですよ。その後、俺の母親の知りあいを頼って、この街からは離れましたけど」 「へえ……」 「けど、あの畠山って奴が、上城さんがナツキさんを隠したことを知って、酔っ払いながら怒鳴りこんできたんですよ。ザイオンのまえで殴りあいの大喧嘩に発展して、それで警察がきて、上城さんも奴と一緒につかまって留置所に入れられちゃって……」 「そんな……。でも上城さんは悪いことしたわけじゃないんだから、すぐに出られたんでしょう?」  警察の話が出て、昨夜の警官の態度を思いだす。上城に対し『薄汚い裏通りから出てくるな』と言っていたことを。

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