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第99話 *

「……上城さん」  呼びかけると、んん、と喉を鳴らすように答えられる。低く響く声音に、耳の後ろから皮膚が粟立った。それが瞬く間に全身に広がっていく。 「……お、俺」 「うん」 「あのとき、上城さんに助けてもらえてよかった」  相手の背に手を回して服を掴んだ。 「上城さんに出会えて、ホントよかった」  唇を離した上城が、陽向の目をのぞき込むようにしてくる。嬉しいのに不安定に揺れてしまう虹彩を、じっと見つめてきた。 「俺もだよ」  口端をかるく持ちあげ、精悍な容貌に愛情をあふれさせる。男らしさが引き立つ、優しげな笑顔だった。  吐息が触れあう距離で、何度かキスを繰り返す。  上城が舌を差し入れてくると、陽向はそれに応えようと、不器用ながらも懸命に絡ませた。上城は擦るように表面を撫で、それから愛おしむように舌先を行き来させてきた。  キスが深くなる。知らない場所に踏み込んでいく感覚がくる。けれど決して嫌じゃなく、自分から深いところにダイブしていくような心地よさがあった。  唇を離し、ため息をもらし、そうしてまた口づける。  上城のことが好きだった。顔つきも、声も、自分より大人っぽいところも力強いところも全部。  相手が陽向の肩に手を回して、ゆっくりとベッドに押し倒してきた。首元に唇を埋め、耳を噛まれて、ぞくぞくと電気が走ったように全身が痺れた。 「……ん」  思わずか細い声がもれる。 「……ぁ、か、上城、さ……」  首を竦めると、顎にも噛みつかれた。  上城は上体を起こしながら、陽向のジャケットを脱がしにかかった。上着を床に放り投げて、下に着ていたシャツのボタンも外していく。シャツを肌蹴けて素肌をさらされれば、待ちかねたように胸元に喰らいついてきた。 「ぁ、は……」  小さく尖った胸に、熱い舌が押し当てられる。舐められ、吸われて、腰が跳ねるほど感じさせられた。

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